【第14回】日本の福祉への新たなモデル提示へ(銭本 隆行)

日本医療大学総合福祉学部ソーシャルワーク学科専任講師
日本福祉大学大学院社会福祉学専攻博士後期課程
 銭本 隆行

自己紹介

 広島市で生まれ育ち、思春期は福岡市で育ちました。広島弁をしゃべる博多っ子純情、と昔は自己紹介していましたが、若い人にはわからないでしょうね。大学から東京に出て、卒業後は全国紙の新聞記者をしていました。東京都庁、警視庁、厚生労働省などを担当しながら、記者生活11年が過ぎたころ、新たな境地でやってみたいと考え、大学時代に中退覚悟で放浪していた際にお世話になった北欧・デンマークの学校に転職しました。デンマークでは、強い自我を持った国民がお互いに主張し合いながらも相手を尊重し、天の配剤と思われるような民主主義のバランスの下に誰もが幸福に生きることを可能とする福祉社会が存在していました。コロナ禍で言われた同調圧や他者依存が強い日本には、国民性や歴史などの違いからもすべてが参考になるわけではないにしても、ひとつのモデルを提示することになるのではないか。そうした考えから、滞在10年を機に帰国し、現在は札幌の大学でひっそり過去の経験をもとにしながら研究を続けています。

研究内容

 大学では政治学士を取得し、新聞記者を経てきた経験から、どちらかと言えば、マクロ・メゾのような、国、行政、現場、住民が一緒になった社会保障、医療福祉関連のシステム、ネットワークづくりに関心を持ち、研究しています。精神障害者の事業所の運営にも現在携わっているので、日本の社会福祉を担っている職員たちに随分欠けているマネジメントの視点についても関心はあります。
 直接的な研究分野としては、デンマーク滞在中に、日本からの視察の受け入れや勤務校での学生との関わりから、高齢者に触れる機会が多く、高齢者分野を専門とし、現地で認知症に関する「認知症コーディネーター」という専門教育を受けました。その経験から、博士課程前期では、「認知症コーディネーター」という専門職の日本への示唆を研究テーマにしました。博士課程後期では、デンマークと日本の高齢者ケアの違いはさまざまな点で多く、日本全国で整備されてきている地域包括ケアへの示唆がデンマークから得られないかというテーマで研究しています。

当学会へのリクエスト

 徒らに歳を重ね、浅学菲才な自分がリクエストというのはおこがましいのですが、学会発表についてのハードルについて少し考えるときがあります。自らの首を絞めるようなものではあるのですが、研究業績を増やそうとやみくもにサラミ論文に類したものや内容の乏しい発表が見受けられます。広く発表を募って新たな知見を増やし、かつ初期キャリア研究者にとっても発表の場がより多く持てることはとても望ましいことです。しかし、形式上だけの発表を当たり前とすれば、学会、学術分野、そして本人にとっても意味がないものになりかねません。社会福祉学への論文には査読者の目がありますが、学会発表についてはそこまでの質の担保がなされているとはいいがたいと思います。論文ほど高いハードルではなくとも、内容について多少の審査などはあった方がいいかと感じることがあります。