【第6回】おもしろい研究(上西 一貴)

上西 一貴

佐久大学人間福祉学部助教
上西 一貴

自己紹介

 北海道の小さな村で生まれ育ちました。今は浅間山のふもとで生活しています。標高が高いため夏はとても涼しいですが、冬になるととても寒い地域で、つい先日、人生初のしもやけになりました。
 大学を卒業してからそのまま大学院で研究を始めました。大学院では経験豊かな実践者の人や、外国から来た人、いわゆる福祉とは別の業界にいる人などさまざまな人が在籍していて、その人たちからたくさんのことを教えてもらいました。実践経験のない無知な状態で入学しましたから、ほかの人の研究や、さまざまな実践を見聞きしながら、「なぜなんだろう」とか「どうなっているんだろう」などたくさんの疑問が出てきました。疑問がたくさん出てくるところ、これが研究対象としての福祉の魅力だと思います。とはいえ、できることは限られているので、こぢんまりと研究に取り組んでいます。

研究内容

 福祉の援助実践における終結、とくに今は地域でのソーシャルワーク実践における終結に関心があり、地域でのソーシャルワーク実践に即した終結概念を探る研究をしています。
 終結はソーシャルワークのプロセスの1つとして位置づけられていますが、研究的にも実践的にもあまり注目されていないということが1970年ころから指摘され始め、その状況は今も続いています。
 そういった状況でしたので、とりあえずきいてみようと、数年前に周りの実践者数人に終結についてきいてみました。そうすると、ある人は「終結がないと困る」と言いました。そして別の人は「終結なんて考えたこともない」と言いました。この違いを疑問に思い、終結への興味がどんどん膨らみました。
 興味本位で終結の研究を始め、進めていくうちに終結の沼にハマりました。やってみると先行研究の蓄積が少ないために、自分で情報の整理から分析方法まで開拓しなければならないことがわかりました。大変です。面倒な作業はたくさんありますし、思いどおりにならないこともあります。大変なのですが、沼にハマっている状態は快感なのです。終結の研究は、とにかくおもしろくて、とてもやりがいがあります。
 この研究は実践の役に立つとか、あるべき方向性を示すとか、そういったことを度外視した興味本位の研究です。ただ、あえて研究の意義を先に示そうとするならば、この研究はソーシャルワーク実践におけるミクロレベルからマクロレベルまでの関係や、課題解決型支援と伴走型支援の関係を理解することに(少しだけですが)つながるのではないかと思っています。

学会へのリクエスト

 これまでの研究は、自分の興味関心で進めてきました。ですから、実践上の問題になっていることを取り上げて、その解決策を提言するというタイプの研究ではありません。自分自身は無知な状態で研究していますから、調査をして、その分析結果をもとに「良い~」「悪い~」などの価値をつけることや、「~が望ましい」「~すべき」と提言するのは気が引けます。そういったこと抜きで、もう少し気楽に研究を発表できればうれしいです。これはあくまでも個人の望みです。