【第16回】30代での挑戦 ―評価に基づく実践で共感の輪を広げたい(小倉 諒也)

社会福祉法人三重県社会福祉協議会 主任
(三重大学大学院地域イノベーション学研究科 博士後期課程(進学予定))
 小倉 諒也

自己紹介

 はじめまして。三重県社会福祉協議会(県社協)の小倉諒也と申します。学部と修士課程では法哲学ゼミに所属しておりました。ロールズの正義論の新訳が出た際には、朝イチに生協へ行って、わくわくしながら手に取ったことを覚えています。ロールズやセンの著書にふれるなかで、「正義」という目に見えないものを、言葉で説明しようとする姿に強く惹かれてゆきました。 
 正しさって何だろう、そういう視点で社会を振り返ってみると、どうやら社会には理不尽なことがたくさんあるらしいことが実感できました。これに気づいた以上、少しでも悲しい思いをする人が少なくなるような社会をつくりたい、という思いで福祉の道に進むことになりました。

研究内容

 県社協入職後に担当したのは、日常生活自立支援事業(地域福祉権利擁護事業)事務局でした。この事業は、県社協が実施主体となり、市町社協に委託をして実施しています。認知症高齢者や知的・精神障がい者が地域で生活するうえで非常に重要です。社協が契約して支援している方は県内だけでも2,000人以上いらっしゃいますが、住民の潜在的ニーズはもっと大きく、すべてに対応するには巨額な予算が必要です。
 県社協をはじめとする非営利組織が、社会活動を安定的に実施するには、まず活動の重要性(価値)を評価し説得力のある形で提示することが必要だと考えます。その方法として、プログラム評価(社会的インパクト評価)に注目しています。活動の評価を行い、成果を明らかにすることは、取組の改善・開発や、新たな資金提供にもつながりうると考えます。
 しかし、ロジックモデルで組み立てられるそれは、一見取り組みやすいようにも見えますが、社協やNPOにおいて必ずしも普及しているとはいえません。博士課程ではそれらの団体がプログラム評価に取組む際の課題を整理し、実践可能性を探っていきたいと考えています。

当学会へのリクエスト

 本学会の定例会等で会員の皆さまと交流できたことで、大学からいったん離れた私もモチベーションを保てました。今後、オンラインでの交流会や輪読会など、気軽に参加できる機会を増やしていただけると、地方住み且つお小遣い制の私からするとたいへんありがたいです。いまはまだ研究者のスタートラインにも立てていませんが、先輩方を見習って精進したいと思っています。
 さいごに、本学会が今後も会員の多様な意見・表現が尊重され、議論が深まる場であり続けてほしいと思います。ありがとうございました。