【第18回】子どものプライバシー保障と適切な情報共有の在り方(中村 豪志)

早稲田大学社会的養育研究所 研究助手
中村 豪志

自己紹介

 私は、生まれも育ちも愛知県です。大学は東京へ進学したのですが、自分の興味・関心に片っ端から飛びつく日々でした。タイ、インドに長期間バックパッカーをしたり、発達障害を持つ子どもの学習塾で仕事をしたり、キャリア教育支援を行うNPO法人でボランティアをしたり。あまり節操がない日々で、自分のやりたいことが分からずいつも悩みました。ただ、振り返ればどれも貴重な経験で、今の仕事につながっていると思います。
 福祉を学ぶきっかけは、もともと理系だったのですが、人の「生活」に関わる仕事に興味を持ったからです。初めは医療福祉(特にホスピスケア)がやりたくて大学に入ったのですが、スクールソーシャルワーカー(以下、SSWr)の先輩との出会いもあり、児童福祉に興味は移っていきました。
 地元の愛知県に戻って大学院に進学しつつ、実際にSSWrも経験しました。現在では社会的養育・養護分野の研究所で仕事をしています。

研究内容

 ソーシャルワーカーの専門職倫理として「秘密の保持」の研究をしています。近年、不登校、いじめ、非行など子どもを取り巻く生徒指導上の課題の背景に、子どもの貧困やネグレクトなど家庭背景の問題が大きく関わっていることが指摘されています。そのため、学校現場では「チーム学校」を推進し、学校内のみならず学校外の関係機関とも積極的な情報共有が求められています。また、こういった子どもの課題への対応において教員の抱え込み状況も指摘されており、SSWrを含めた多様な専門職との情報連携・行動連携が、今後の学校現場において重要な視点となります。
 その一方で、子どもや保護者のプライバシー保障は今後ますます課題になってくると考えられます。子どもの抱える課題に対して家庭背景も含めたアプローチが必要となった際には、子どもの家族関係や生育歴、利用している福祉制度のみならず、時には病歴や犯罪歴など、個人の尊厳に深く関わる情報を扱うことになります。また、子どもとの面談において、リストカットや希死念慮など緊急性の高い情報を伝えられた際には、誰に、どこまで共有するのか、またその得た情報をどのように管理するのかは、その子どもの権利主体性とも関わる重要な問題になります。
 学校における適切な情報共有と子どもや保護者のプライバシー保障は表裏一体の関係にあり、SSWrの視点から「秘密の保持」の遵守の在り方について考えています。

当学会へのリクエスト

 高校生以下の方々にも、社会福祉学の面白さを伝える機会を作ってほしいなと、個人的に感じています。自分自身、社会福祉分野に進もうと思ったのは、高校時代でした。正直に言えば、福祉は高齢者支援のイメージが強く、児童福祉・障害福祉・医療福祉など多様な領域に渡っていることを知りませんでした。今では、人の「生活」全般に関わる魅力的な学問分野だと考えているので、ぜひ進路選択に関わる早い段階で福祉の魅力を知ってほしいなと思います。