【第8回】迷いながら進む(牧田 俊樹)

北星学園大学大学院博士後期課程
牧田 俊樹

自己紹介

 わたしが、研究者を志して、大学院の修士課程に入学したのは、37歳の時でした。それまでは、社会福祉学という学問がどのような学問か、恥ずかしながら知りませんでした。学部では教育心理学を学び、学部卒業後も社会福祉に携わることはなかったからです。学問をはじめるのに遅いことはないと言われますが、知識も経験もない中での入学はやはり不安でした。それでも、入学を決意したのは、当時従事していた非正規の仕事を辞めることになり、ある意味で行き場を失い、途方に暮れていたことが一つに挙げられます。普段から勉強が好きだったわたしは、勉強にすがり付くしかありませんでした。そして、その間の勉強で偶然出会ったのが「障害学」でした。経験されたものとしてだけではなく、学問として「障害」を学ぶということは、新鮮であり、非常に興味深いものでした。このことも、入学を決意させた理由の一つでした。現在は、研究の上でも、生活の上でもさまざまな悩みを抱えていますが、それでも学問をする喜びを味わっています。

研究内容

 はじめに、「障害」とは一体何なのかという根本的な疑問がありました。さまざまな人が「障害」を語ります。しかし、そのさまざまに語られる「障害」の奥深くに「真」の「障害」というものがあるのではないかと考えました。そこで、修士課程では、日本における「障害」に関して、遡れる限界と思われる時代まで遡り、「障害」が何であるのかを突き止めようと試みました。ところが、調査を進めて行くうちに、「障害」の「真」の姿を浮かび上がらせることなど可能なのだろうかという疑問が湧いてきました。むしろそれは「障害」の一面に過ぎず、「障害」の「真理」などつかむことはできないのではないか、もしくは、そのような行為にあまり意味はないのではないかと考えるようになりました。そこから、博士課程では、「障害」とは何かという問いから、「障害」という言葉をいかに使うことが、障害当事者にとって「有用」かという問いの変換を行い、それを「障害定義」の問題として検討することとしました。「障害定義」というからには、言葉に関する理解が必要です。したがって、言語に関する哲学を土台として、現在「障害定義」の問題にアプローチしています。言語に関する哲学を「障害定義」の研究に持ち込み、「障害」という言葉を「有用性」の観点から「使用」するという研究は、あまり見られません。よって、社会福祉学、障害学の領域に新たな知見を加えることができるのではないかと考えています。

学会へのリクエスト

 まず、学会誌の年4回の発行により、学生や若手研究者が論文発表機会を十分に得られることができることに感謝申し上げます。その上でリクエストとして、学会誌に掲載される理論研究が少ないように感じますので、理論研究がより積極的になされる土台を作っていただけると幸いです。また、社会福祉学は学際性に重きを置いている学問と考えますので、より他分野(民俗学や文化人類学、文学など)の知見を応用した研究の掲載を可能にしていただけることを期待しております。