【第26回】福祉職のキャリアデザインと人材定着 -働き続けたい職場をめざして-(子安由美子)

日本福祉大学福祉経営学部
子安由美子

自己紹介

 私は、伊勢湾を臨み、多様な生物と共に生きる自然豊かなキャンパスで活動しています。一般企業から転職して福祉の世界へ入り、知的障害者の就労支援、社会福祉協議会での研修企画・運営、民生委員事務局、生活福祉資金貸付といった地域福祉の実践を経験しました。その中で、福祉の仕事が好きで真摯に取り組んでいた仲間が、次々と職場を去っていく姿を目の当たりにし、胸が締めつけられる思いを抱きました。なぜ彼らは福祉を離れなければならなかったのか。その問いが私の心に残りました。さらに、前職で福祉職員キャリアパス対応生涯研修課程を県内で実施するプロジェクトに携わった経験が、「福祉職としてどうすれば人が働き続けられるのか」を研究として探究するきっかけとなりました。この問題意識を深めるために修士課程に進学し、現在は社会福祉士の養成に携わりながら博士課程でもがき続けています。煮詰まったときは好きなアーティストのライブに出かけたり、海辺で波音を聴きながら本を読んだりします。潮風に吹かれながら過ごすひとときは、心をほぐし、探究を続ける力を与えてくれる大切な時間です。

研究内容

 私の研究テーマは、福祉職のキャリアデザインと人材定着を中心に、そのための人材育成や組織開発に関するものです。福祉の職場は、人が人を支える専門性を根幹に据えていますが、慢性的な人材不足や早期離職が課題となっています。特に新人や中堅職員にとって、キャリアパスの明確化や「自己期待」と「他者期待」の調整は、働き続けたいと思える職場づくりに直結する重要な要素です。
 私はこれまで、法人や事業所におけるキャリアパス構築や人材育成の取り組みを調査し、福祉職が「なぜ働き続けられないのか」「どうすれば働き続けられるのか」を明らかにしようとしてきました。現場経験と研究を往復しながら、福祉職が志を貫き、自らのキャリアを生き続けられる仕組みを提案することを目指しています。
 さらに今後は、研究で得られた知見を基盤として、福祉職が気軽に語り合い、お互いのキャリアを支え合える「キャリアラボ」を作りたいと考えています。そこでは、日々の実践や悩みを共有しながら「自分のキャリアをどう生きるか」を前向きに考え、互いにエールを送り合える場にしたいと思います。最終的には、福祉職一人ひとりが「働き続けたい」と思える職場づくりを社会に広げていくことが目標です。

当学会へのリクエスト

 本学会には、初期キャリア研究者が気軽に語り合える居場所づくりをお願いしたいと考えています。研究は孤独になりがちですが、同じ志を持つ仲間と安心して交流できる場があることは、学びを続けるうえで大きな力になります。これまで学会が企画してくださったエッセイやサロンから、私自身も多くの元気と勇気をいただいてきました。ページをめくるたびに「自分ももう少し頑張ろう」と思わせてくれる、その温かい言葉に励まされてきました。この場を借りて、深く感謝を申し上げます。今後も研究者同士が学び合い、支え合える場をさらに広げていただければ幸いです。