【第18回】医療ソーシャルワーカーによる早期介入効果の再考(葛西 孝幸)

青森県立保健大学健康科学部社会福祉学科
葛西 孝幸

自己紹介

 母語を津軽弁とする葛西孝幸(かさいたかゆき)と申します。私は青森県立保健大学健康科学部社会福祉学科を卒業後、一般病棟・回復期リハビリテーション病棟・緩和ケア病棟等を有する青森県内の民間病院において、医療ソーシャルワークを15年間実践しました。この間、個別支援から、津軽地域および青森県の地域連携実務者のネットワーク構築まで経験させていただきました。その後、母校大学院への進学と同時に助手として着任し、教育研究者として6年目を迎えています。現在は、医療ソーシャルワーカー時代に関係性を構築した地域や各機関の方々とともに研究等できていることに、喜びを感じております。また、一学年50名定員の学生の中に、医療ソーシャルワーカーを目指す者が1~2割程度おり、実習指導や就職活動支援を楽しくさせていただいております。ゼミを持つことができるようになりましたら、医療ソーシャルワークの実践現場にゼミ生とともに赴き、学生の独創的な考えを取り入れながら新たな知の発見等を目指していくことを短期目標に据えています。
 ちなみに、趣味は?との質問を受ければ、テニス、野球、スノーボード、ドライブ…と答えていたのは医療ソーシャルワーカー時代までで、現在は娘二人にしつこくねだられ腕を磨いたクレーンゲームになってしまいました。
 このような私ですが、皆様、何卒よろしくお願い申し上げます。

研究内容

 現在の医療ソーシャルワーカーの業務は、診療報酬や組織運営の影響を受けて退院支援に偏る傾向にあり、またそれを業務の全てだと考えている実践者もいることを問題視しています。これまでの研究では、外来医療や地域活動に焦点を当て、医療ソーシャルワーカーが早期介入効果として認識している「入院予防」効果などの示唆を得てきました。現在は、早期介入効果に関連して、外来における保健医療福祉職や患者、家族のヘルスコミュニケーションの研究に取り組んでいます。私の研究の最終目標は、医療ソーシャルワークが患者のアドヒアランスに与える影響を明らかにし、医療ソーシャルワーカーの存在価値を高めることです。質の高い医療ソーシャルワーカーの配置人数を増やしていくことで、福祉課題を抱えた患者や家族のみならず、治療に専念したい方々の多くが医療ソーシャルワーカーに出会うことができるようにしたいと考えています。

当学会へのリクエスト

 教育研究機関に所属する初期キャリア研究者の共通の悩みになるのかもしれませんが、教育と研究の両立に関するモデルを示していただければ幸甚に存じます。特に、研究時間を確保するために、組織的に取り組んでいる好事例などをご紹介いただければ、研究の更なる発展に、学会として大きく寄与できるものと考えています。