【第25回】実践者として、そして研究者として(岩田 貞昭)

大阪人間科学大学人間科学部社会福祉学科講師
岩田貞昭

自己紹介

 はじめまして岩田貞昭と申します。神奈川県川崎市出身、高校3年生までは横浜で暮らしました。学生への自己紹介で使うネタですが、中学校の同級生は「伊代はまだ16だから・・・」の松本伊代さんです。大学進学と同時に憧れの京都にでてきて、はや40年が経過しました。
 大学時代のクラブ活動(人形劇をしながら南九州を旅する)を通じて、知的に障害のある子どもたちとかかわり、卒業後36年間を社会福祉の実践現場で過ごしました。障害福祉、高齢者福祉を中心に地域を意識しながら実践に携わる中、そもそも「社会福祉とは何か」。素朴な問いを持ったのをきっかけとして、遅咲きながら54歳のとき研究の扉を恐る恐る開けたのが、この道に入るきっかけです。
 大学院の修士課程を修了したのは56歳。これからの人生、実践をしながら研究を進めるのか。チャレンジして研究職の世界に飛び込むのか。迷いに迷った末に出した結論は、後者のチャレンジ。おっちゃんでも“夢”に向かって歩む姿を見せたい。その想いで2年間に約20校の公募に応募し、ご縁をいただいた現在の職場で教員として歩みはじめました。周囲からは、奇跡を起こした“おっちゃん”と言われています(笑)。

研究内容

 私にできることはなんだろうか? そのことを考えたとき、おのずと実践現場での経験をいかした研究への想いが広がり、現在は社会福祉法人の運営のあり方をテーマに研究を進めています。その中でも大切にしたいことが「社会福祉の本質の理解」です。修士論文では、社会福祉法人の本来的役割・機能をテーマに職員教育のあり方などを検討しました。そして、研究をすすめる中、現在の実践現場において社会福祉の原理や理論に関する教育が不足している状況を目の当たりにしています。当事者本位を謳いながら、実は支援者本位としているのではないか。支援が困難な当事者へのかかわりは、実は支援者にとっての都合ではないか。さまざまな問いが生まれていきます。
 では、実践現場の専門職は、社会福祉の理念とは距離のある実践に納得しているのか。そうではなく、いまの状況で想いをぶつける場所を得ていないのではないか感じます。一つのケースに対してとことん議論をし、多方面から考え答えを導きだしていく。そんな実践を望んでいると思うのです。
 そのためには、社会福祉とは何か。原点に立ち返ることが必要と考えます。「ここが、いま社会福祉の実践現場には必要だ」との認識のもと、社会福祉の本質の理解をベースに、運営管理に関する研究を進めていきたいと考えています。

学会の魅力とリクエスト

 学会の魅力は、なんといっても議論を重ねることだと思います。私自身、実践者として学会にかかわりを持ちました。実践機関に在籍しているとき、実践報告は行うが実践研究報告にまで展開することが難しい状況がありました。ぜひ、「研究者と実践者が連携できるシステムを構築してほしい」と思っています。実践と研究の交互作用は、今後の社会福祉学において重要ではないかと日々考えています。
 未熟な私ですが、今後ともご指導のほどよろしくお願いします。