【第1回】私が進んできた社会福祉の道(庵原 美香)

同志社大学大学院博士後期課程/京都大学医学部附属病院MSW
庵原 美香

自己紹介

 2021年の春で,医療ソーシャルワーカー(MSW)としての実践経験が16年目となり,大学院は修士課程(2年)を終え,博士課程に在学し4年目になります.私は,6年前に宮城から京都に移り住み,就業(実践)と就学(研究)に取り組んでいる学会員です.
 この場をお借りし,現在の道に至るまでの経緯,研究内容,今後の展望について紹介をさせて頂こうと思います.

これまでの経緯

 現在の就業と就学の道に進むきっかけとなった出来事は,2011年の東日本大震災です.私の故郷は被災地の宮城県にあり,当時もMSWとして故郷から離れた県内の病院に勤務していました.とりわけ故郷の被害が甚大で,被災地化した故郷では多くの人の死,ご遺体を目の当たりにしました.生きていてほしいと切に願い,家族や親しい人の行方を探す故郷の人々は,大半が生活の場を無くした方々でした.生と死の間で,悲しみ・怒り・悔しさで涙する人,辛い感情を堪えながらも笑顔で振る舞う人,複雑な心境を抱える多くの人々が渦巻く中,否応無しに各自が生活を再建せねばならない状況でした.当時の私は,自分にできることは何かと考え,震災時から復興募金活動を行うと同時に,院内の緩和ケアチームの一員となり,死と向き合う支援を学ぶ機会を得ました.また在宅支援にも目を向けました.しかし,被災地は自身の小さな活動だけでは太刀打ちできない課題ばかりで,自分には何もできなかったという無力感しかありませんでした.
 上記をきっかけに,2011年の震災以降,自分にできることは何かをさらに考え続け,社会福祉の道を信じ突き進んできました.2012:介護支援専門員取得,2014:認定医療社会福祉士取得,2015:京大病院入職,2016:同志社大学大学院修士課程入学&認定社会福祉士(医療分野)取得,2017:救急認定SW取得,2018:修士課程修了&博士課程入学&京都iMED(informatics-Medicine-Engineering research against Disaster)研究会参画,2019:スーパーバイザー登録&認定医療社会福祉士更新,2021:認定社会福祉士(医療分野)更新,というのが軌跡です.

研究内容

 その道中,研究の芽は,2011年から院内の緩和ケアチームとして活動する中で,スピリチュアルペインの概念と職種を問わないスピリチュアルケアの方法へ関心を持ったことに端を発します.そこから,上述した故郷の状況下で,自分自身が生きている意味を問われ,自分の存在が揺さぶられるような辛さや苦しみという痛みがスピリチュアルペインではないかと所感し,自分の中で仮説が芽生えました.激甚災害後の人々の中にはスピリチュアルペインという現象があらわれるのではないか,そうならば災害時のソーシャルワークにそのペインをケアする方策や展開が必要ではないかと考えるようになりました.それが,私の研究内容であり,その教育の導きを受けながら研究(就学)に取り組み,実践(就業)をしているという経緯です.

今後の展望

 今後の展望は,なぜ災害とスピリチュアルペイン,そのケアの必要性を私の感覚が結びつけたのか,その自身の感性を突き詰め研究を進めていきたいと思っています.被災地や現場の声を大切にしながら,さらに社会福祉の道へ進み学びを深めるべく,私にできることは何かを考え,できる限りにおいて学会に貢献させて頂きたく存じます.また学会を通しご指導ご鞭撻を賜れるような関係性を紡いでいけましたら何より恵みなことです.