【第25回】“私ごと”から始まった社会福祉研究、“身近”から“世界”へ(張 梦瑶)

東洋大学福祉社会デザイン学部社会福祉学科助教
張梦瑶

自己紹介

 こんにちは。私は中国の天津市で生まれ、大学を卒業した後、日本に留学してきました。博士後期課程を終えてからは、東洋大学ライフデザイン学部(現在の福祉社会デザイン学部)で教員として教育や研究に取り組んでいます。
 社会福祉に興味を持つようになったきっかけは、大学時代に参加したボランティア活動でした。自閉症スペクトラム障害のあるお子さんとそのお母さんをサポートする団体での活動を通して、支援を必要としている人たちや、そうした方々を取り巻く環境について深く考えるようになりました。
 日本に来てからは、大学院で勉強しながら研究を進める一方で、日本の福祉制度や地域福祉の取り組みにも関心を持ち、実際にさまざまな現場に足を運んできました。

研究内容

 私は一人っ子として育ったこともあり、学生のころからなんとなく「将来、親の介護ってどうなるんだろう?」と考えていました。そんな漠然とした不安が、今の研究テーマの原点になっています。
 博士後期課程では、老々介護の現状について、量的・質的な調査を通して、リスクや支援のあり方について探ってきました。研究を進めるなかで、家族介護者が直面する課題の深さや多様さを実感し、さらに踏み込んだ研究が必要だと感じて、現在は新しいテーマに取り組んでいます。
 今は科研費の支援を受けて、介護のために仕事を辞めざるを得なかった家族介護者への調査を進めています。ヨーロッパの事例も参考にしながら、「仕事と介護の両立」を支える仕組みについても考えています。
 また、地域福祉計画の策定に関わる中で、日本に住む外国人家庭の育児の課題にも関心が広がってきました。私自身が外国人家庭の一員でもあるので、当事者としての視点も大切にしながら、異なる文化背景を持つ家庭が地域にどう適応し、どう子育てしているのかを明らかにしたいと思っています。今後の支援のヒントになるような研究を目指しています。

当学会へのリクエスト

 学生のころから、日本社会福祉学会の年次大会には毎年参加してきました。ここでは、最前線の情報に触れることができるだけでなく、東アジアの福祉の動向を知る良い機会にもなっていて、とても有意義だと感じています。
 これからさらに、海外の研究者との交流の場が広がって、国際的な視点から日本の福祉制度を見直すような機会が増えると嬉しいです。私自身も、学会を通して多くの方と意見を交わしながら、社会福祉の研究と実践の発展に少しでも貢献していけたらと思っています。