【第17回】「楽しさ」から始まる福祉の提案へ(浅石 裕司)

日本福祉大学福祉経営学部医療・福祉マネジメント学科 助教
日本福祉大学大学院福祉社会開発研究科国際社会開発専攻 博士課程
 浅石 裕司

自己紹介

 私は、生まれも育ちも岩手県です。博士前期課程修了後は、東日本大震災による被災児童の居場所支援NPOの立ち上げと運営から始まり、特養、包括、障害児入所施設、県庁への派遣、法人総務部と、多様な福祉現場を経験させてもらいました。今の職場は港区新橋(大学の東京サテライト)ですが、その直前には、本州一寒い豪雪地帯にある、コロニー型の施設に勤務していました。近くにはスキー場と温泉があり、スズメバチの巣を駆除したり、施設の裏山で上司とキノコを採ったりしていた日々を懐かしく感じるこの頃です。趣味は、あえて言うならばまちづくりです。学生時代からボランティア活動にのめり込んでいたこともあり、今でも地元の町で、まちづくりを行うNPO法人に参画しています。

研究内容

 主に地域福祉とまちづくりの視点から、地域住民の主体性の醸成がどのように進められるのかを研究しています。これまでの地域福祉における参加の推進は、福祉教育をはじめ、目的や理念、課題解決などの「正しさ」を基盤として語られていました。近年、自治会等の地縁を基盤とした組織だけではなく、NPOやアソシエーション型のコミュニティ等をはじめとする、多様な組織や活動が生まれ、期待されています。こうした中で、より柔軟で緩やかな参加のあり方が捉えなおされており、「正しさ」だけを追求しない、プロではない、明確な目標を持たなくても良い、といった「楽しさ」の概念が語られ始めています。「楽しさ」とはどのようなもので、どのように生まれて広がり、住民の主体性、ひいては福祉の推進につながっていくのか、そのプロセスや手法を明らかにしていきたいと考えています。地域共生社会の実現に向かう一つの視点として、「楽しさ」の理論化を目標に取り組んでいます。
 上記のメインの研究とは別に、福祉・介護現場におけるロボットの活用について研究しています。私が経験した福祉の現場では、人手不足による職員の疲弊や、「ソーシャルワークの仕事」に当てる時間を削って他の業務をせざるを得ない実態がありました。このことが、退職者の増加や経営難、仕事の魅力低下などの負のサイクルに陥るというもどかしさを感じていたため、こうした現状の改善に貢献できないかと考えています。いわゆる福祉機器や介護のサポート器具もありますが、私は福祉や介護の周辺にある業務の効率化や機械化に着目しています。既に存在する様々な技術やロボットを福祉現場に活用することや、「あったらいいな」を形にする提案も目指したいと考えています。

当学会へのリクエスト

 非常におこがましい限りですが、もしも可能であれば査読の返却がもう少し早くなれば嬉しいな、と感じています。お忙しい先生方が、一生懸命ご対応くださっていることは承知しておりますが、初期キャリアの立場からすると、頑張って実績を積んでいきたい重要な時期でもあります。もちろん、査読期間と丁寧さは表裏一体だと感じ感謝しておりますが、「査読が早い学会」も魅力的ではないかと思います。