【第9回】一対一の対話を通して(安達 朗子)

北星学園大学大学院博士後期課程
安達 朗子

自己紹介

 私は、15歳の時の交通事故により、視覚障害者となりました。20歳の時、高校生活をやり直すため、盲学校に入学しました。卒業後、北星学園大学短期大学部英文学科へ入学し、四大に編入学、その後同学大学院文学研究科および社会福祉学研究科で修士号を取得し、現在の博士後期課程に進みました。
 私が大学院で研究したいと思った理由は、日常生活の中にありました。出会った視覚障害の方たちと人生を語り合った時のことです。私は、さまざまな場面で、夢や目標、日常生活の要望すら自由に持つことができず、くやしい思いをしている方たちが少なくないことを知りました。私にはその姿が、「あきらめている」ものではなく、「あきらめさせられている」ものに見えました。そして、なぜ視覚障害があるだけで自由な選択肢を持つことができないのかという疑問を持ち、社会に目を向け、研究を始めました。しかし、視覚障害者に関する研究はあっても、視覚障害の方たちの声を反映させた研究は決して多くありませんでした。そこで私は、視覚障害の方たちの一人一人の声を集め、研究というフィルターを通してその声を社会に届けることが私にできる役割の一つなのではないかと考えるようになりました。

研究内容

 私は、女性視覚障害者が女性であるとともに視覚障害者であるがゆえに被る「複合差別」をテーマにライフストーリー・インタビューを行っています。女性視覚障害者たちの差別経験は時に、個人の悩みや問題として軽視されることも少なくありません。その差別を把握するためには、女性視覚障害者の生き方に焦点を当て、その現実を捉える視点で行われる研究が必要とされているのではないかと思います。私は、一対一の対話を通して、女性視覚障害者の差別経験を明らかにし、その問題解決に少しでも貢献できる研究を行いたいと思っています。この研究で得られた対話の蓄積は、多様な生き方を理解し、人生に必要な気づきをもたらしてくれる貴重な研究資源になるのではないかと思っています。

当学会へのリクエスト

 新型コロナウイルスの影響により、イベント開催に導入されたオンライン方式は、視覚障害がある場合には機器の整備や利用に対する格差の問題が生じましたが、その一方で、遠方によりこれまで不参加だったイベントに参加できるようになったという声も聞かれました。私自身もさまざまなイベントへの参加が増え、助かっています。With コロナと呼ばれる時代に入り、以前の生活様式を取り戻す働きは重要ですが、コロナ禍によって生まれた便利なアイディアは残したまま、対面とオンラインのハイブリッド形式など、今後も誰にとっても参加しやすい学会の開催をお願いしたいと思っています。