岩田正美著 有斐閣、2024年
本書は、「私たちの社会福祉」が可能なのかを論じながら、「私たち」とはいったい何・誰なのだろうと問いかけてくる本です。
本書の読みどころをあげてみましょう。最近の社会福祉に関する議論のなかでは、「自助・共助・公助」と「自立(支援)」という言葉が流行しています。
本書の第1章は、そうした最近の共助と公助の捉え方が偏っていることや、自助や自立の捉え方にも課題があることを指摘しています。
つづく第2章は、最近の共助と公助の捉え方がどうして偏っているといえるのかについて、歴史や理論に即した説明がなされます。
第3章では、共助と公助が「福祉国家」のもとで組み合わされて発展してきたのはどうしてなのかを説明しています。
社会問題に関する科学的な発見や民衆の不満や不安などが、「社会」の福祉を追求しようとする福祉国家の発展をもたらした、ということが述べられています。
第4章では、この「社会」の福祉と「個人」の福祉が複雑にからまりあっていることが指摘されます。
本書では「私たちの社会福祉」が可能なのか、ということが中心的な問いになっていますが、5章以降はこの問いへの応答がなされていきます。
まず、これまでの社会福祉は一般向けのサービス(普通枠)と特別な人々向けのサービス(特別枠)がつくられてきたために、「私たち」が分断されてきたのではないか、ということが論じられます。
つぎに、この分断をのりこえるにはみんなが「参加」できるようにするだけではなく、政治や社会のしくみを公正なものへと抜本的に変えていくことが大切だと主張されます。
あまり馴染みのない用語や考え方が登場しますが、調べながら読み進めるとよいでしょう。
紹介者:圷洋一(東京都立大学)
