一般社団法人日本社会福祉学会 第73回秋季大会
一般社団法人日本社会福祉学会 第73回秋季大会 メインビジュアル
一般社団法人日本社会福祉学会 第73回秋季大会 開催場所・開催日時

大会について

学会長挨拶

日本社会福祉学会第73回秋季大会によせて

一般社団法人日本社会福祉学会
 第9期会長 和気純子(東京都立大学)

 歴史的猛暑が続いた2025年の夏もようやく終わりが見えてきました。思えば昨年の挨拶では、度重なる災害や世界の各地で続く戦争の光景に、「日常化した異常」が当たり前になる恐ろしさについて記しましたが、今年になっても残念ながら状況は変わっていません。戦後80年という節目の年ではありますが、反省や追悼に静かな気持ちで向き合うというよりは、異常気象や物価高も含め不安定な世の中に、心穏やかではいられない日々となっています。

 また本年は、社会福祉学会会長として、4月と7月に会長声明を発出しなければならない事態が生まれました。4月には、日本学術会議法の政府による改正をめぐり、日本学術会議による法案修正の決議と声明を支持する会長声明を発出いたしました。戦後、戦争への反省から設立された日本学術会議は、時の権力や短絡的な利害に左右されず、独立した自由な学術の営みにより人類社会の福祉へ貢献することを旨として活動してきましたが、今回の修正決議は、政府による法人化案に盛り込まれた政治的統制への懸念を表明したものです。最終的に、法案自体は可決されましたが、社会福祉学および社会学の関連学会の皆様の署名活動などの成果をうけて、11項目におよぶ附帯決議がつけられました。あらためて皆様のご協力に感謝を申し上げるとともに、今後も引き続き、学問の独立性と自主性が担保されるよう、注視していく必要があります。

 また、7月には、生活保護基準の引き下げを違法とした最高裁判所判決をうけて、基準の科学的、客観的な根拠を保持する重要性と、被害をうけた利用者の権利の回復にむけた措置が講じられる必要性を指摘しました。本件については、措置の内容についていまだに議論が続いているところです。いずれにしても、両声明とも、科学である社会福祉学の意義を確認し、科学的知見が正当かつ適切に制度に反映されるべきことを主唱したものです。当たり前のことですが、その当たり前が覆される社会が到来していることに、私たちはあらためて危機感を抱き、共通認識をもって対処していかなくてはなりません。

 折しも、第73回秋季大会は、「現代社会福祉学の思想的基盤―理論と実践の根源を問う―」をテーマに開催されます。混迷を深める現在であるからこそ、その原点ともなる思想的基盤を確認し、社会福祉の理論と実践の根源と本質を問うことが重要になります。

 最後になりますが、第73回大会の開催にあたり、大会長である小山隆先生(同志社大学教授)、大会実行委員長である空閑浩人先生(同志社大学教授)をはじめ、同志社大学の諸先生および学生・院生の皆様、関係者の皆様には多大なご尽力を賜りました。また今大会は、前回大会同様、対面での開催に加え、メイン会場でのシンポジウムは録画配信される予定です。一人でも多くの皆様が大会に参加され、共に議論できることを願っています。

大会長挨拶

第73回秋季大会 大会長
同志社大学社会学部教授 小山 隆

 日本社会福祉学会第73回秋季大会を、本学今出川校地の寒梅館および良心館で実施させていただく運びとなりました。皆様のご参加を心よりお待ち申し上げます。
日本社会福祉学会の全国大会を、同志社大学で実施させていただくのは、第42回大会(1994年)以来であり約30年ぶりとなります。当時同志社大学に赴任したての若手教員の僕は会計担当となり、現金収入の参加費、約100万円を(預ける場所もなく)鞄に入れて、なくさないように必死になりながら自宅と往復したことを思い出します。そして最終的に1万円だけどうしても合わず何度も計算して苦しんだことも今は懐かしい思い出です。(今はそのような作業を教員がしなくて良いと聞いて安心しています。)

 2025年は新島襄によって同志社英学校が創立され150周年になります。結果的にそのような年に『全国大会』を開催させていただくことができることを、ご縁であると思い関係者一同喜んでいます。

 キリスト教主義の本学は山室軍平、留岡幸助を始めとして開学当初より福祉関係の先輩を輩出してきました。また1931年に社会事業学専攻が設置されて以降は竹中勝男、嶋田啓一郎両先生をはじめ諸先輩が、実践に加えて研究にも深く関わるようになりました。古い記録を見ていますと、全国大会を最初にお引き受けさせていただいたのは、第4回大会(1956年)で『ボーダー・ライン層について』という大会テーマであったようです。

 昔話ついでに『社会福祉学』が最初の7号までは特集を組んでいましたので、それを追いますと、「社会福祉と諸科学」「ソーシャル・ケースワーク特集」「最低生活費論」「社会福祉における住民参加」「経済開発と社会福祉」「戦後20年の社会福祉研究」「地域格差と社会保障」となっています。言葉遣いなどは当然違いますが、その多くが現在にも通底するテーマであり今後とも忘れてはならないものと思えます。

 コロナからウクライナ、ガザといった重要な問題をそれぞれバラバラなものとして切り離して考えるのでなく、現代的テーマを普遍的課題と繋ぎ合わせ検討していく作業を大切にしていきたいと思っています。

 今回の大会が、どこまで射程の長い議論を展開できるかはわかりませんが、皆さんの日々の研究・実践に少しでも刺激になればと思い準備をしてまいります。

実行委員長挨拶

第73回秋季大会 実行委員長
同志社大学社会学部教授 空閑浩人

 日本社会福祉学会第73回秋季大会を2025年10月4日(土)・5日(日)に同志社大学今出川校地(室町キャンパス&今出川キャンパス)で開催させて頂くことになりました。

 今から30年前(1994年)に第42回大会(3日間のプログラムでした)が同志社大学で開催されたときは、私は大学院1年目の院生スタッフでした。「ガッカイ」の言葉の意味もよくわからないままに、ひたすら会場の中や外を走り回っていた記憶があります。

 今回の大会テーマは、「現代社会福祉学の思想的基盤-理論と実践の根源を問う-」です。

 この挨拶文を書いています2024年は、大変な年明けとなりました。1月1日に発生した能登半島地震によって、甚大な被害がもたらされています。被災地の人々が、2024年が良い年になることを願いつつ、それぞれの場所で新年のはじまりを迎えていたと思うと、とても心が痛みます。

 そして、現在も戦争のニュースが続いています。解決の糸口が見えないまま、パレスチナ自治区ガザ地区やウクライナをめぐる戦争も長期間にわたっています。人間の英知を結集して、なんとかこの状況が一刻も早く終わって欲しいと祈る毎日です。

 人間とその生には尊厳があります。その尊厳が冒される様々な状況に対して、社会福祉学は徹底して抗わねばならないと思います。人が生きるとは何か、いのちとは何か、生活や暮らしとは何か、それが支えられるとはどういうことかを問い続けないといけないと思います。そのためにも今大会では、今一度学問としての社会福祉学の思想的基盤に立ち返り、その理論と実践の根源を問う機会に、そしてこの時代の中での社会福祉学や学会のあり方を展望する機会にできればと思っています。

 このようなテーマと開催趣旨のもとで、基調講演やシンポジウム等のプログラムを企画して参ります。

 本学今出川キャンパスは、JR京都駅から市営地下鉄で10分の場所にあります。例年多くの観光客で賑わっている時期ではありますが、せっかくの機会ですので、秋の始まりの京都もぜひ楽しんで頂ければと思います。皆様にとって、学び多い、また思い出にのこる大会となりますように、社会学部社会福祉学科教員、大学院生、学部学生からなるスタッフ一同、心を込めて準備を進めて参ります。

 皆様方のご参加を心よりお待ち申し上げております。